ずっと音楽に夢中

身も心も解放してくれる素敵な音楽に出会ったら、興奮さめやらぬうちに書きつづります。あれこれ書きますが、結論はすべて「音楽っていいな」です。

近田春夫が90年代に予見したヒップホップの未来とは?

近田春夫がテレビ番組「白昼夢」(フジテレビ系・日曜深夜)に出演、自身の経歴について語りました。
番組は前半と後半に分かれていて、前半ではデビューからヒップホップ黎明期の80年代後半にビブラストーン日本語ラップを開拓するまでを、後半ではトランスに目覚めてから現在までの活動をみずから紹介しています。
なかでも興味深かったのは、90年代なかば頃にラップをやめてしまった理由。
近田春夫は以前、飽きたとか関心がなくなったとか口にしていましたが、具体的な理由を述べてはいませんでした。
今回はそのことについて詳しく触れています。


きっかけは90年代前半。
この頃、西海岸のギャングスタ・ラップが台頭します。
それまでのヒップホップは、アメリカの東部が中心でした。
その状況下で、物議をかもす楽曲を発表していたN.W.Aを代表に、「西のお騒がせ連中」として頭角を現したのがギャングスタ・ラッパーたちです。
ギャングスタ・ラップは、野蛮で暴力的なリリックが特徴ですが、一方で音質の良さも売りにしていました。
その代表作のドクター・ドレ―「The Chronic」(92)とスヌープ・ドッグ「Doggystyle」(93)。この2作に、近田春夫は言及しています。
「それまでのヒップホップは、言ってみればローファイ。音の悪さが味」
ところが、ドクター・ドレ―を聴いたら「度を越してハイファイだった」。
「ここから先のヒップホップは質の向上しかなくなると思った」と当時の思いを明かしました。


これが近田春夫がヒップホップを見限った理由とのことですが、かなり先見の明がありますね。
予想はみごとに的中しています。
現在のヒップホップは、音質の高解像が競われるマスタリング第一の音楽になりました。
楽曲制作では、アーティストよりマスタリング・エンジニアの手腕に重点が置かれます。


「ドレ―以降、次のステップになっている音はない」とも近田春夫は指摘しています。
たしかに、どんなに表現を工夫しても、最終的には音質に回収されてしまうのですから。
ヒップホップには、音質の壁が立ちはだかっています。
仮に壁をぶち破ることができたとしても、音質を捨てたヒップホップは進化せず退化するだけかもしれません。
一体「次のステップ」はどこなのでしょうか。
「ドレ―以降」問題は、かなりの難問です。


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