ずっと音楽に夢中

身も心も解放してくれる素敵な音楽に出会ったら、興奮さめやらぬうちに書きつづります。あれこれ書きますが、結論はすべて「音楽っていいな」です。

ポップスの定型からはみ出している シンリズムの世界観って?

シンリズムが昨年5月にリリースした「Have Fun」を毎日のように聴いています。
収録されているのは柔らかい陽射しのなかで聴くのに適した楽曲ばかり。
まさに春から初夏にぴったりのアルバムです。
散歩のBGMにすると気分が上がります。
 
明るく爽やかな雰囲気のあるこのアルバムですが、歌詞に踏み込んでいくと100%穏やかな空気が漂っているわけではないということに気づかされます。
ここでは、「君」と「僕」という2人の関係を描いた歌詞が収録曲の大半を占めています。
ポップスの定型だと「僕」は「君」へ共感をしがちですが、シンリズムは「君」へ共感ができないことを歌詞にしています。
「他人への共感」が前提になっていないんです。これはポップスの定型外ですね。
むしろシンリズムの歌詞には、「他人の感覚や感情」への疑問符が多く見受けられます。
 
1曲目の「彼女のカメラ」は、冒頭からこう歌われます。
 
君が「いいね」って言う物
僕にはただのガラクタに見えるよ
 
「君」の感性はわからない、といきなりの疑問符です。「共感できない」からのはじまりですね。
サビ頭の歌詞もこれに呼応しています。
 
Ah....二人の目に映るそれぞれの絵は
決して同じじゃないけど
 
最後は「レンズを通したら見えるのかな?」という歌詞に着地します。
つまり、「共感したい」です。ポップスの定型だと最初から約束されている共感が前提から退けられてるおもしろさがあります。
 
タイトルと曲調がフリッパーズギターのオマージュになっている「ATTACK!ATTACK!ATTACK!」は、相手への理解がまだ足りないから未来の予測がつかないという心情を歌っています。
 
6曲目の「Pure」も出だしから疑問符です。
 
笑った そう見えないのは
この場で 僕だけか
 
揺れる街灯と 止められない衝動
間違った なんて 知らないよ
 
相手が笑ったはずなのに、「そう見えない」。相手の感情がわからないという視線がダイレクトに注がれています。
 
「話をしよう」はSNSによるコミュニケーションへの疑問符を歌っています。
 
あいつらと 口を閉じ会話を
指先は 忙しく動き文字を打つ
 
ああ見飽きた 空虚な言葉が
列を作る 心は
トンネルの奥底
 
話が噛み合わないね このままなら
きっと 誤解続きで嫌になる
もっと 距離を縮めて ボールを投げよう
 
SNSでつながっていても、そこでのやりとりには行き違いや一方通行があって虚しい。そのやり場のない気持ちにリアリティーを感じます。
 
「遊びロック」は嫉妬を歌っていますが、歌詞の「見えないバリア」などから相手に踏み込めない領域があるという視点が見えます。
 
こうして歌詞だけを取り出すと重々しい感じに思われるかもしれませんが、「Have Fun」の楽曲はいたって軽快でポップに仕上がっています。
最初に書いた通り、春から初夏の空気にぴったりなアルバムです。
 
ただ、歌詞には単なるポップなだけではないシビアな世界観が出ています。
それを知るとより一層楽しめるのでは。
 


Have Fun