ずっと音楽に夢中

身も心も解放してくれる素敵な音楽に出会ったら、興奮さめやらぬうちに書きつづります。あれこれ書きますが、結論はすべて「音楽っていいな」です。

伊藤銀次「デッドリイ・ドライブ」40周年盤の聞きどころとは?

伊藤銀次の1stソロアルバム「デッドリイ・ドライブ(DEADLY DRIVE)」40周年盤が、リリースから1年を迎えました。

名盤とされるこの作品は、過去にも数回リマスタリング盤が出ています。
CD盤のリリース回数をカウントすると、なんと5回!驚異的な再販率です。
 
初CD化盤(1991年)の「デッドリイ・ドライブ」を聴いたのは、いまから25年前でした。
ちょうどポリスター時代の伊藤銀次作品がキューン・ソニーから続々とCD化されていた頃です。
90年代初頭の伊藤銀次は、テレビのオーディション番組「イカ天」(「三宅裕司いかすバンド天国」)の審査員を務めたことで脚光を浴びていました。
1989年リリースのアルバム「DREAM ARABESQUE」も力作に仕上がり、ちょっとした「銀次バブル」が起きていたので、ソロデビュー作の「デッドリイ・ドライブ」が91年にCD化されるというのは、絶好のタイミングだったと思います。
 
イカ天」審査員の初リーダー作という事前情報でハードルが上がっていましたが、いざ聴いてみると、今ひとつピンときませんでした。
ソロ名義の作品なのに、伊藤銀次のリーダー作というよりバンドの音になっていたからです。
シンガー・ソングライター伊藤銀次の楽曲を味わおうという心構えで聴いたら、バックの演奏を味わう造りになっていて、拍子抜けしてしまいました。
 
80年代以降の伊藤銀次作品は、楽曲のポップなアレンジや、弾けるように軽やかなリズムが持ち味でした。
そちらを体験してから遡って「デッドリイ・ドライブ」に行き着くと、まだその方向性を打ち出せていないように感じられてならなかったのです。
「デッドリイ・ドライブ」は伊藤銀次の個性が発揮されたアルバムとは言えず、むしろ伊藤銀次の意図を汲んだスタジオ・ミュージシャンたちが自由に演奏して個性を発揮したアルバムに仕上がっていました。
伊藤銀次の特性が、演奏のクオリティによって薄められてしまっていると思えてならなかったのです。
 
そんな印象を抱いてから、「デッドリイ・ドライブ」はしばらく聴かずにいました。
ところが昨年リリースされた40周年盤」は、聴きたいと思わせる仕様になっていました。
いままでとはリマスタリングの質が大きく異なるというのです。
今回は、新たに発見された制作当時のオリジナル16chアナログマルチトラックテープ4本を使用したのこと。
 
それなら聴いてみよう、とCDを入手。
プレイボタンを押して音が出た瞬間、最初のCD盤にはなかった音圧の強さが感じられました。
ぐっと寄ってくるような演奏。
各楽器の響きのよさ。
こういうことだったのか!と納得しました。
「デッドリイ・ドライブ」は、伊藤銀次&デッドリイ・ドライブ・バンドの作品だったわけですね。
ソロ名義の作品として考えてはいけなかったんです。
初CD化盤では自由に演奏しているように感じられましたが、今回はそうは思いませんでした。
スタジオに入って即興で合わせていくうちに、伊藤銀次のアイデア出しにミュージシャンたちが乗って曲が生まれたのだということが、息の合った演奏から伝わってきたのです。
40周年盤」にして、ようやく制作意図が理解できました。
 
収録曲はシティポップあり、カバーあり、ラテンあり、フュージョンあり、ファンクあり、ソウル・バラードあり…というふうに、バラエティーに富んでいます。
 
演奏で出色なのは、坂本龍一のピアノと斎藤ノブパーカッション。
リマスタリングで音圧不足が解消されたことで、ともに存在感が増しています。
YMOや独奏でしか坂本龍一を知らない人には、是非この迫力のあるピアノ演奏を聴いていただきたいです。
 
「King Kong」から「Hobo's Lullaby」までのライブ感も聞きどころです。
レコーディングスタジオの空気が楽器演奏の振動でかきまわされているのが感じられます。
 
伊藤銀次をはじめ、「デッドリイ・ドライブ」に参加したミュージシャンは、各々が日本の歌謡曲離れた音楽をやろうとしていたのでしょう。「40周年盤」では、その意気込みが確認できました。
当時の一流ミュージシャンたちのがっしりとした連帯感がどの曲からも伝わってきます。
 
余談ですが、「風になれるなら」のモチーフはRealisticsの「April Fool Connection」でしょうか。
また、そのB面の「Putting It Down(To The Way I Feel About You)」が「こぬか雨」のモチーフだとすると、これをカバーしたユージン・レコードのアルバムとリリース年がシンクロしてます。

Realistics - April Fool Connection - YouTube

「これっぽいの作りたいね」とメンバーとやりとりしたのが想像できて微笑ましいですね。


デッドリイ・ドライブ(40周年記念デラックス・エディション)