ずっと音楽に夢中

身も心も解放してくれる素敵な音楽に出会ったら、興奮さめやらぬうちに書きつづります。あれこれ書きますが、結論はすべて「音楽っていいな」です。

近田春夫が90年代に予見したヒップホップの未来とは?

近田春夫がテレビ番組「白昼夢」(フジテレビ系・日曜深夜)に出演、自身の経歴について語りました。
番組は前半と後半に分かれていて、前半ではデビューからヒップホップ黎明期の80年代後半にビブラストーン日本語ラップを開拓するまでを、後半ではトランスに目覚めてから現在までの活動をみずから紹介しています。
なかでも興味深かったのは、90年代なかば頃にラップをやめてしまった理由。
近田春夫は以前、飽きたとか関心がなくなったとか口にしていましたが、具体的な理由を述べてはいませんでした。
今回はそのことについて詳しく触れています。


きっかけは90年代前半。
この頃、西海岸のギャングスタ・ラップが台頭します。
それまでのヒップホップは、アメリカの東部が中心でした。
その状況下で、物議をかもす楽曲を発表していたN.W.Aを代表に、「西のお騒がせ連中」として頭角を現したのがギャングスタ・ラッパーたちです。
ギャングスタ・ラップは、野蛮で暴力的なリリックが特徴ですが、一方で音質の良さも売りにしていました。
その代表作のドクター・ドレ―「The Chronic」(92)とスヌープ・ドッグ「Doggystyle」(93)。この2作に、近田春夫は言及しています。
「それまでのヒップホップは、言ってみればローファイ。音の悪さが味」
ところが、ドクター・ドレ―を聴いたら「度を越してハイファイだった」。
「ここから先のヒップホップは質の向上しかなくなると思った」と当時の思いを明かしました。


これが近田春夫がヒップホップを見限った理由とのことですが、かなり先見の明がありますね。
予想はみごとに的中しています。
現在のヒップホップは、音質の高解像が競われるマスタリング第一の音楽になりました。
楽曲制作では、アーティストよりマスタリング・エンジニアの手腕に重点が置かれます。


「ドレ―以降、次のステップになっている音はない」とも近田春夫は指摘しています。
たしかに、どんなに表現を工夫しても、最終的には音質に回収されてしまうのですから。
ヒップホップには、音質の壁が立ちはだかっています。
仮に壁をぶち破ることができたとしても、音質を捨てたヒップホップは進化せず退化するだけかもしれません。
一体「次のステップ」はどこなのでしょうか。
「ドレ―以降」問題は、かなりの難問です。


ザ・クロニック


ドギー・スタイル

やばい日記みたいな音楽 田中ヤコブって誰?

シンガー・ソングライターの書いた曲は、ときに日記のように感じられることがあります。
たとえば、キャロル・キングジェイムス・テイラー
シンガー・ソングライターの代表格である彼らは、その日の気分や思いをシンプルな弾き語りや最小限のアレンジで歌として表現しています。
そうして作られた楽曲は、日記のように感じられます。

 

先月デビューアルバムをリリースした田中ヤコブもまた、先人のように日記的な楽曲を書いています。
ただ、その日記にはどこか不穏な空気が漂っていて、聞き流すことができません。
素朴なようで歌詞やコード進行、歌、どれをとってもひと癖ある感じで、何かが引っかかってきます。
ヤコブな気持ち」の歌詞を見てみましょう。

悟った気持ちでいた
頭もいいと思ってた

なのに今日も こんな気持ち
なのに明日も こんな気持ち

吠えまくる馬鹿犬にしか見えなかった
若さは弱さだと思っていた

大人はいつもいつまでも正しいと思ってたのに
僕は騙された
僕は騙されていた
そして君を騙した
つもりが出し抜かれてた

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日記的でありながら、独白内容が穏やかではない。そんな歌詞です。
アルバムタイトルの「お湯の中のナイフ」からして、ポランスキー監督の映画「水の中のナイフ」をもじっていて、禍々しい含みを持たせています。
本人の名前が田中ヤコブで、曲名が「ヤコブな気持ち」ということは、この楽曲で歌われたことが彼の基本姿勢となっていくのでしょうか。
田中ヤコブには曲作りのセンスの高さを感じますが、いつか奇才・北園みなみと組んでほしいとも思います。この不穏さが、もっとすごいことになるでしょう。

 

余談ですが、「ヤコブ」で検索すると「狂牛病」の記事がいくつかヒットします。ヤコブ病ですね。不穏だ…


お湯の中のナイフ

SOLEIL 1stアルバムは渋谷系を通り越した「奇跡」のはつらつさ

佐藤清喜、カジヒデキ高浪慶太郎、白根賢一、かせきさいだぁ
SOLEILの1stアルバム「My Name is SOLEIL」に名を連ねた作家陣です。
渋谷系」の人たちばかりですね。
このメンバーが集まったなら確実にそれっぽい音になるだろうと予断があったんですが、実際に耳にしてみると違っていました。これは渋谷系じゃない。
そもそも中心メンバーのサリー久保田と中森泰弘渋谷系界隈の人だったし、収録曲も渋谷系になっているはずなのに、それいゆ(グループ名はSOLEIL、ボーカルは「それいゆ」)のボーカルがあまりにもはつらつとしていて、渋谷系の枠に収まっていません。
少年・少女的なやんちゃさを感じさせたとしても、どこかで背のびをしているのが渋谷系の基本トーンだとすれば、それいゆはここでそんな大人ぶろうとする意志を示していません。
ただ、等身大の自分を見せているのかといえばそうでもない。
逆に実年齢より幼ない女の子を演じているように感じられます。
大人ぶっているのでなく、子供ぶっている。
全編を通して、そんなスタンスが貫かれています。
このスタンスは一体何なんでしょうか?

よく聴くと、アルバムの随所にその答えが散らばっていました。
収録曲には、あるマンガ作品が埋め込まれています。
「さよなら14才」は「14才」、「MARINE I LOVE YOU」は「わたしは真悟」。
そう、どちらも楳図かずおの代表作です。
歌詞が「わたしは真悟」からの引用でできている「MARINE I LOVE YOU」のタイトルは、作品のヒロイン山本真鈴(まりん)からつけられています。
真鈴は主人公の悟とともに奇跡を起こす子供です。
もうお気づきですね?
この楽曲でそれいゆが演じているのは、まりんです。
さらに、アルバム後半に「さよなら14才」が配置されていることから、全編に渡ってそれいゆはまりんを主演したとも推測できます。
音から実年齢より幼ない女の子を感じるのは、そうした意識によるのではないでしょうか。

また、アルバムにはビートルズネタも満載です。
近田春夫が書いた「姫林檎 GO GO!」は、「BAD BOY」「Dizzy Miss Lizzy」「Please Please Me」といったビートルズのモチーフが散りばめられていて、コミカルな色あいが強く出ています。
近田春夫楳図かずおと楽曲制作のタッグを組んだこともあり、これまた楳図つながりの人選かもしれません。

渋谷系になってしまえ」と挑戦してくる楽曲群をそれいゆは身軽にかわして、最後までまりんを演じ通しました。
このアルバムでは、渋谷系のキャストで固めたのに渋谷系を通り越した音に仕上がる、という「奇跡」が起こっています。


My Name is SOLEIL

ファミコン世代必見! 80年代ゲーム音楽 もっと評価されるべき名曲 4選

任天堂が公式サイトで、「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」(ミニファミコン)の生産・販売再開を発表しました。
 
 
入荷日は 6月28日。もうすぐですね。
初回に買えず悔しい思いをした人は、このチャンスを逃さないようにしましょう。
 
さて、ファミコン時代のゲームはBGMの名曲もたくさん生み出しました。
名前を出しただけですぐにメロディーが思い浮かぶという曲もあるかと思いますが、今回は80年代ゲームのなかから、もっと評価されるべきBGMを紹介します。
 

光神話 パルテナの鏡

躍動感あるイントロでリズムに乗ると、転調を重ねる曲調へと展開。
神話感を表現しようとしたのでしょう。
プレイヤーの不安を掻き立てるBGMです。作曲は田中宏和
 

メトロイド

80年代ゲームには、一時クラシック風BGMが氾濫していましたが、これは現代音楽風ですね。とっつきにくい雰囲気で子供に媚びてないところが素敵すぎます。
またも作曲は田中宏和
待機中のBGMは、間の取り方で不気味な味つけが増しています。
 

月風魔伝

すでに曲がいいことは知られていますが、数ある「和風BGM」の中でもっともかっこいい曲だという点でもっと評価されていいと思います。
和風、中国風BGMは、短調安易になりやすいという欠点があります。五音音階を使えばなんとなくそれっぽくなるので、作り込みがポイントになります。
大人になると、ヨナ抜き音階で作ってるとか仕組みがわかってしまって薄っぺらく聞こえがちなものですが、月風魔伝YMOのような和風テクノポップを意識したのか、そうなっていません。重厚感があり、曲作りで当時の限界に挑戦した感じが伝わってきます。
 

ファンタジーゾーン

80年代でもっともポップなゲーム音楽だったのではないかと思います。
ラテン、カリプソ、ファンク、フュージョン、様々な音楽が聴けます。
セガのゲームは画面もカラフルでポップでしたね。
同時期のスタジオぴえろ的な色彩感覚です。
作曲者の川口博史(Hiro)は、エンデューロレーサーの音楽も担当しています。
当時のアイドル、アニソンの要素も入ってるような。
 
 
いかがですか。今回は80年代ゲーム音楽から、もっと評価されるべき名曲をセレクトしました。
是非じっくり聞いて、懐かしい気分になっていただけたらと思います。
 
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確実に手に入れたい人はお早めにこちらからどうぞ。


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夏に聴きたい! 爽快なシティポップ 10選

暑い日が続いていますね。
もうすぐ夏本番です。
夏が好きな人も苦手な人も、
涼しくなれる音楽を聴きたくなりませんか?
 
2016年をピークに盛り上がり、いまや定番化したシティポップには、一聴してひんやりとした心地のよい感覚になれる爽快な楽曲がいくつもあります。
今回はシティポップから選りすぐった「涼しくなれる10曲」を紹介します。

1.Pictured Resort「Away to paradise」

その名の通りリゾート感溢れる音を追求している大阪出身の4人組、Pictured Resort。
海沿いの風景を描いたジャケットも夏仕様です。
一曲目には、アルバム「All Vacation Long」からAway to paradise」を選びました。
真夏の太陽の下に吹くそよ風をイメージさせるギターカッティングで涼しくなってください。

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2.cero「Summer Soul」

若手のように見えて、実はキャリアが長い3人組、cero
2004年結成なので、すでに活動歴14年の中堅です。
セレクトしたのは3rdアルバム「Obscure Ride」から、Summer Soul。
ハネるリズムと軽やかなボーカルで作り出すグルーブが夏の暑さを緩和してくれます。
ところでSummer Soulってタイトル、「冷まそう」に引っ掛けてあると、今さらながら気づきました。
歌詞をよく聴くと、「Summer Soul」の後に「Cool down,baby」と連呼しています。
夏の暑さを冷まそう、というメッセージが隠されていたんですね。

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3.Emerald 「Holiday」

クールで洗練された演奏に定評のあるEmeraldからは、涼しげな2ndアルバム「Pavlov City」収録の「Holiday」をどうぞ。

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4.Suchmos「GIRL」

CMでもおなじみの「STAY TUNE」や「808」などヒットを連発、アルバム「 THE KIDS」の売り上げも20万枚超の好セールスを記録したSuchmos
横浜・湘南エリア出身のグループでもある彼らの1stから、海行きにもってこいの「GIRL」をおすすめします。

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5.UNCHAIN「Underground Love」

ジャズやソウル、フュージョンの要素を取り入れたロックを体現する結成22年のベテラン4人組、UNCHAIN
熱量とクールさを併せ持つ演奏が、夏の空気にはまります。

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6. 高橋飛夢「海岸近く」

東京都大田区生まれ江戸川区育ち、知る人ぞ知る存在のシンガー・ソングライター、高橋飛夢(タカハシトム)。
デビューミニアルバム「キオクノシルシ」から、海を描写した「海岸近く」をセレクトします。

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7.ウワノソラ「Umbrella Walking」

すべての作品から、はっぴいえんどシュガーベイブユーミンといった70年代のシティポップ黎明期を代表するアーティストへのリスペクトを感じさせるウワノソラ。
2012年に結成、 大学時代から関西を中心に活動し、2枚のアルバムをリリースしています。
2ndアルバム「陽だまり」から、さわやかで瑞々しい夏向けの「Umbrella Walking」を推します。

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8.citty「Sidecar Dog」

2009年結成、ウワノソラと同じく過去のシティポップへオマージュを寄せながら、ほんわかした存在感を醸し出す独自の立ち位置にあるグループ。
「夏」を活動のメインテーマとしているとのことで、夏っぽい曲がたくさんあります。

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9.土岐麻子「STRIPE」

00年代からシティポップ路線へ進み、いまやクイーン・オブ・シティポップとも称される土岐麻子
ファッションのトレンドも取り込んで、都会の夏のまばゆい陽ざしと日陰のコントラストを表現しています。
唯一無二の歌声と清涼感を楽しんでください。

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10. HALFBY feat. Alfred Beach Sandal 「Slow Banana」

最後は夕刻に合う楽曲を。
DJ、高橋孝博のソロプロジェクトHALFBY (ハーフビー) がAlfred Beach SandalとコラボしたSlow Banana。
せつないメロディーが夏の夕暮れを演出します。

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いかがでしたか。今回は涼しくなれるシティポップを10曲紹介しました。

お出かけのときにも、自宅で涼むときにも、是非BGMに聴いてみてくださいね。

 


THE BAY


ALL VACATION LONG

伊藤銀次「デッドリイ・ドライブ」40周年盤の聞きどころとは?

伊藤銀次の1stソロアルバム「デッドリイ・ドライブ(DEADLY DRIVE)」40周年盤が、リリースから1年を迎えました。

名盤とされるこの作品は、過去にも数回リマスタリング盤が出ています。
CD盤のリリース回数をカウントすると、なんと5回!驚異的な再販率です。
 
初CD化盤(1991年)の「デッドリイ・ドライブ」を聴いたのは、いまから25年前でした。
ちょうどポリスター時代の伊藤銀次作品がキューン・ソニーから続々とCD化されていた頃です。
90年代初頭の伊藤銀次は、テレビのオーディション番組「イカ天」(「三宅裕司いかすバンド天国」)の審査員を務めたことで脚光を浴びていました。
1989年リリースのアルバム「DREAM ARABESQUE」も力作に仕上がり、ちょっとした「銀次バブル」が起きていたので、ソロデビュー作の「デッドリイ・ドライブ」が91年にCD化されるというのは、絶好のタイミングだったと思います。
 
イカ天」審査員の初リーダー作という事前情報でハードルが上がっていましたが、いざ聴いてみると、今ひとつピンときませんでした。
ソロ名義の作品なのに、伊藤銀次のリーダー作というよりバンドの音になっていたからです。
シンガー・ソングライター伊藤銀次の楽曲を味わおうという心構えで聴いたら、バックの演奏を味わう造りになっていて、拍子抜けしてしまいました。
 
80年代以降の伊藤銀次作品は、楽曲のポップなアレンジや、弾けるように軽やかなリズムが持ち味でした。
そちらを体験してから遡って「デッドリイ・ドライブ」に行き着くと、まだその方向性を打ち出せていないように感じられてならなかったのです。
「デッドリイ・ドライブ」は伊藤銀次の個性が発揮されたアルバムとは言えず、むしろ伊藤銀次の意図を汲んだスタジオ・ミュージシャンたちが自由に演奏して個性を発揮したアルバムに仕上がっていました。
伊藤銀次の特性が、演奏のクオリティによって薄められてしまっていると思えてならなかったのです。
 
そんな印象を抱いてから、「デッドリイ・ドライブ」はしばらく聴かずにいました。
ところが昨年リリースされた40周年盤」は、聴きたいと思わせる仕様になっていました。
いままでとはリマスタリングの質が大きく異なるというのです。
今回は、新たに発見された制作当時のオリジナル16chアナログマルチトラックテープ4本を使用したのこと。
 
それなら聴いてみよう、とCDを入手。
プレイボタンを押して音が出た瞬間、最初のCD盤にはなかった音圧の強さが感じられました。
ぐっと寄ってくるような演奏。
各楽器の響きのよさ。
こういうことだったのか!と納得しました。
「デッドリイ・ドライブ」は、伊藤銀次&デッドリイ・ドライブ・バンドの作品だったわけですね。
ソロ名義の作品として考えてはいけなかったんです。
初CD化盤では自由に演奏しているように感じられましたが、今回はそうは思いませんでした。
スタジオに入って即興で合わせていくうちに、伊藤銀次のアイデア出しにミュージシャンたちが乗って曲が生まれたのだということが、息の合った演奏から伝わってきたのです。
40周年盤」にして、ようやく制作意図が理解できました。
 
収録曲はシティポップあり、カバーあり、ラテンあり、フュージョンあり、ファンクあり、ソウル・バラードあり…というふうに、バラエティーに富んでいます。
 
演奏で出色なのは、坂本龍一のピアノと斎藤ノブパーカッション。
リマスタリングで音圧不足が解消されたことで、ともに存在感が増しています。
YMOや独奏でしか坂本龍一を知らない人には、是非この迫力のあるピアノ演奏を聴いていただきたいです。
 
「King Kong」から「Hobo's Lullaby」までのライブ感も聞きどころです。
レコーディングスタジオの空気が楽器演奏の振動でかきまわされているのが感じられます。
 
伊藤銀次をはじめ、「デッドリイ・ドライブ」に参加したミュージシャンは、各々が日本の歌謡曲離れた音楽をやろうとしていたのでしょう。「40周年盤」では、その意気込みが確認できました。
当時の一流ミュージシャンたちのがっしりとした連帯感がどの曲からも伝わってきます。
 
余談ですが、「風になれるなら」のモチーフはRealisticsの「April Fool Connection」でしょうか。
また、そのB面の「Putting It Down(To The Way I Feel About You)」が「こぬか雨」のモチーフだとすると、これをカバーしたユージン・レコードのアルバムとリリース年がシンクロしてます。

Realistics - April Fool Connection - YouTube

「これっぽいの作りたいね」とメンバーとやりとりしたのが想像できて微笑ましいですね。


デッドリイ・ドライブ(40周年記念デラックス・エディション)

LUCKEY TAPESがキャッチーに進化!メジャーデビューで新機軸

LUCKEY TAPESがビクターからメジャーデビュー。
5月23日にリリースされる新曲「22」のミュージックビデオがYouTubeで公開されました。
今回は22」がグループにとってどんな位置づけにあるのかを考えてみます。
 
3年ほど前にLUCKEY TAPESの1st「The SHOW」を聴いたときの印象は、「このグループって頑固な人たちの集まりなんだろうなー」でした。
演奏から、それぞれのこだわりを譲らない感じが伝わってきたんです。
ベースはスラップを死守してるし、ギターは単音ミュートでカッティング弾きがちだし、それ以外でもフィリーソウルやディスコを詰め込んでるし。演奏全体からは行き着こうとしてるのはモータウンだということが伝わってくる。
きっと頑固で硬派な人たちに違いないと思いました。
 
2nd「Cigarette & Alcohol」は、シティポップにカテゴライズされることに反発するかのような内容になっていました。
ビートルズのギミックが飛び出したり、ベースのスラップが抑制されていたりで、前作と違う色を出そうと模索しているのが窺えます。
「シティポップブームに乗ってやろう」という欲を出さず、その方向を拒否する頑なさと、聴きこんだらやっぱりモータウンを目指すスタンスがLUCKEY TAPESらしくて、変わっていなかったと安心したものです。
 
ただ、この時点で一つ懸念がありました。
2作を聴いても曲名が記憶に残らないんです。
「The SHOW」の2曲目なんだっけ?とか、「くだらねーよ」のあの曲とかいう憶えかたをして、曲名がパッと出てくるのは「TONIGHT!」ぐらいなんですが、それすらエクスクラメーションマーク「!」が付いていることが確認しないと思い出せない。
つまりは、楽曲や歌詞がタイトルに直結しておらず、曲名が憶えにくい。それがLUCKYTAPESの弱点ではないかと思っていました。
 
今回の「22」は、その弱点をみごと克服しています。
一聴してすぐ、「トゥエニトゥエニトゥエニトゥエニトゥ~」が耳に残りました。
それが曲名だという親しみやすさ!
歌メロと歌詞がタイトルに一直線です。
メロウなグルーブはキープしつつ、いままでになかったキャッチーな言葉の響きを取り入れ、グループ史上最高に憶えやすい一曲になりました。
トゥエニトゥエニトゥエニトゥエニトゥ~。
思わず口ずさみたくなりますね。
 
LUCKEY TAPESにはよりポップになって勢いに乗ってほしいと思いますが、
ブレない姿勢は今まで通り貫いてほしいです。
 

 


22

80年代レトロを現代に再現! 5人のイラストレーターたち

バブル時代のリバイバルはすでに定着したのでしょうか。
2年ほど前からバブルを連想させる音楽やファッション、ダンスが盛り上がりを見せたことで、いまやバブリーなセンスは普通になりました。
それはイラストやデザインにも反映されていて、市場に流通している本や音楽CDのジャケットにはだいぶ80年代、90年代テイストが目立ちます。
 
なかでも気になるのが、80年代レトロ風の作風を確立しているイラストレーターたち。
それぞれ懐かしさを大切にしながらも独特で、一度目にすると引き込まれてしまうような世界観を持っています。
今回はそんなイラストレーター5人を紹介したいと思います。
 

■ステレオテニス

80年代のファンシーな世界を現代的にアップデートしたイラストを中心に、デザイン、映像も発表しているアーティスト。きゃりーぱみゅぱみゅとのコラボやももクロでんぱ組.incのグッズデザインも手がけています。今の時代に調和するデザインのオリジナルグッズも販売されているので、インテリアにもなりそう。

renote.jp

■Utomaru

原色があざやかなイラストが特徴のイラストレーター、グラフィックデザイナー。
クリエイティブチーム「POPCONE」所属。
ORESAMAのジャケットは揃えて飾りたい。


Hi-Fi POPS(初回限定盤)(Blu-ray Disc付)

 

■ F*Kaori (エフ カオリ)

アニメプラスレトロポップをテーマに描くイラストレーター、グラフィックデザイナー。galaxxxyグラフィックチームにも所属。パステルカラーが特徴的。和む。

www.pixiv.net

 

■ 高橋由季

カヤヒロヤとデザインユニット『コニコ』としても活動するイラストレーター。
第190回ザ・チョイスに江口寿史による審査で準入選。
ELVISS PRESSから作品集「ニューテレポーテーション」が発行されています。
CDジャケットだとSpecial Favorite Musicを手掛けていますね。
脱力感のあるイラストに癒されます。

takahashiyuki.tumblr.com

 

■ボブa.k.aえんちゃん

80年代マンガ風イラストが持ち味のイラストレーター。
テレビの仕事では、昨年放送されたドラマ「架空OL日記」の作中画や「あいのり」のイラストを担当。
水曜日のカンパネラディアブロ」や江本祐介「ライトブルー」のミュージックビデオの劇中マンガも描いています。
今春からローリーズファームで、イラストをデザインに取り入れたコラボレーションアイテムを期間限定で発売。Tシャツはまだ買えますね。 


[Rakuten BRAND AVENUE]イラストレーターT/SS LOWRYS FARM ローリーズファーム カットソー

 

いかがでしたか。80年代レトロな作風を確立しているイラストレーター5人を紹介してみました。

今回取り上げたイラストレーター関連のグッズとして、「NEW 80s MATERIAL 80年代的イラスト素材集」が販売されています。 ステレオテニス監修、F*Kaoriも作品も入っていますね。 80'S気分にどっぷり浸りたい方はどうぞ。


NEW 80s MATERIAL 80年代的イラスト素材集

RYUTist「無重力ファンタジア」がアイドルソングを超えたわけとは?

新潟市古町を中心に活動するアイドルグループ「RYUTist」(りゅーてぃすと)が、シングル「青空シグナル」をリリース。
そのカップリング「無重力ファンタジア」がYouTubeでも公開されました。
 
いやーかなりいい曲ですね。
作編曲はikkubaru(イックバル)。彼がEspeciaに提供した「アビス」も名曲でしたが、これもまた素晴らしい。
曲のよさに加えて、歌も秀逸です。
 
RYUTistは抑えられたトーンの歌を披露しています。
一聴しただけで、その雰囲気にぐっと引き込まれました。
 
声をはっきりくっきり出して歌うのがアイドルソングのトーンだとすると、ワントーンくらい下の声で歌っています。
かといって声がくぐもって元気がないというわけではなく、逆にひたむきに訴えかけるように歌っているのが感じられます。
「青空シグナル」は元気いっぱいなアイドルソングですが、「無重力ファンタジア」のイメージは、もっと大人っぽい落ち着いた雰囲気。
両者で醸し出すトーンにギャップがありすぎますね。この差がかなり面白いと思いますが。
それにしても、「無重力ファンタジア」はどうしてこんなに抑えめのトーンで歌っているのでしょうか?
 
考えられるのは、「無重力」の雰囲気を表現しているということ。歌のトーンを抑えめにしたのは、宇宙空間のイメージをあらわすため静寂を意識したからでは。あくまで推測ですが、もしそうだとすればこの歌は「無重力」をうまく表現しきれていると思います。
 
「無重力ファンタジア」の落ち着いたトーンは、アイドルソングの枠を超えています。
 


無重力ファンタジア


青空シグナル

ポップスの定型からはみ出している シンリズムの世界観って?

シンリズムが昨年5月にリリースした「Have Fun」を毎日のように聴いています。
収録されているのは柔らかい陽射しのなかで聴くのに適した楽曲ばかり。
まさに春から初夏にぴったりのアルバムです。
散歩のBGMにすると気分が上がります。
 
明るく爽やかな雰囲気のあるこのアルバムですが、歌詞に踏み込んでいくと100%穏やかな空気が漂っているわけではないということに気づかされます。
ここでは、「君」と「僕」という2人の関係を描いた歌詞が収録曲の大半を占めています。
ポップスの定型だと「僕」は「君」へ共感をしがちですが、シンリズムは「君」へ共感ができないことを歌詞にしています。
「他人への共感」が前提になっていないんです。これはポップスの定型外ですね。
むしろシンリズムの歌詞には、「他人の感覚や感情」への疑問符が多く見受けられます。
 
1曲目の「彼女のカメラ」は、冒頭からこう歌われます。
 
君が「いいね」って言う物
僕にはただのガラクタに見えるよ
 
「君」の感性はわからない、といきなりの疑問符です。「共感できない」からのはじまりですね。
サビ頭の歌詞もこれに呼応しています。
 
Ah....二人の目に映るそれぞれの絵は
決して同じじゃないけど
 
最後は「レンズを通したら見えるのかな?」という歌詞に着地します。
つまり、「共感したい」です。ポップスの定型だと最初から約束されている共感が前提から退けられてるおもしろさがあります。
 
タイトルと曲調がフリッパーズギターのオマージュになっている「ATTACK!ATTACK!ATTACK!」は、相手への理解がまだ足りないから未来の予測がつかないという心情を歌っています。
 
6曲目の「Pure」も出だしから疑問符です。
 
笑った そう見えないのは
この場で 僕だけか
 
揺れる街灯と 止められない衝動
間違った なんて 知らないよ
 
相手が笑ったはずなのに、「そう見えない」。相手の感情がわからないという視線がダイレクトに注がれています。
 
「話をしよう」はSNSによるコミュニケーションへの疑問符を歌っています。
 
あいつらと 口を閉じ会話を
指先は 忙しく動き文字を打つ
 
ああ見飽きた 空虚な言葉が
列を作る 心は
トンネルの奥底
 
話が噛み合わないね このままなら
きっと 誤解続きで嫌になる
もっと 距離を縮めて ボールを投げよう
 
SNSでつながっていても、そこでのやりとりには行き違いや一方通行があって虚しい。そのやり場のない気持ちにリアリティーを感じます。
 
「遊びロック」は嫉妬を歌っていますが、歌詞の「見えないバリア」などから相手に踏み込めない領域があるという視点が見えます。
 
こうして歌詞だけを取り出すと重々しい感じに思われるかもしれませんが、「Have Fun」の楽曲はいたって軽快でポップに仕上がっています。
最初に書いた通り、春から初夏の空気にぴったりなアルバムです。
 
ただ、歌詞には単なるポップなだけではないシビアな世界観が出ています。
それを知るとより一層楽しめるのでは。
 


Have Fun